メキシコで死にかけたことについて

午前5時のティファナ。

世界有数に治安が悪いメキシコとアメリカの国境の街で俺は警官に銃を突きつけられていた。

どうしてこうなった。。。

俺は手をあげて抵抗する気はないとアピールしながら今晩の出来事を思い返していた。

 

ティファナに行くのはこれが5,6回目だった。煙草を買いに行ったり、ナイトクラブに行ったりと少しづつメキシコの異様な空気にも慣れていたので留学生の友達とメキシコのストリップクラブに行くことになった時もそれほど警戒していなかった。

いつも通りUBERで国境まで向かい徒歩で国境を渡る。信じられないくらい適当な税関を抜けるとそこはメキシコだ。

俺たちはタクシーを捕まえてhong kongというストリップクラブに向かった。

5ドルの入場料を払ってストリップクラブのテーブルに案内してもらう。チップを渡すとボーイは女の子を呼んできてやるといったが、男3人女2人できていたので遠慮しておいた。女は呼ばなくてもそこらじゅうで裸になって踊っていたから特に女を買う必要もなかった。

酒でまあまあ酔っていた俺は一人でストリップクラブをうろついていた。どの女もかなり濃い化粧で不気味に笑っていた。その女たちを取り囲む男たちは我先にと女の体を触ってはチップの1ドルをステージに投げ込んでいた。

初老の中国人男性が俺の目の前で相当気前よくチップをはずんでいた。かなり酔っているようでまともにチップをステージにいれることができていなかった。彼の巻いたチップのうち1枚が俺の目の前に落ちる。周りの男も女も気がついていなさそうだったので拾ってポケットに入れた。女にやるチップに使えばいいか。

ステージを離れたところで突然前後を180㎝くらいの男3人に囲まれた。スペイン語なまりの英語によるとチップを拾ったのがまずかったらしい。俺は抱えられるようにして世界でも有数に危険な街に放りだされた。

入口のセキュリティにごねてみたが当然聞く耳を持たれず入れてもらえない。携帯もなければ、財布の中も小額紙幣が10ドル分ほどあるだけだった。他にはパスポートと煙草だけ。とりあえず中の友達に現状を伝えなくてはアメリカに帰れない。仕方なく俺はストリップクラブの正面、やばそうなメキシコ人がうようよしている道の真ん中で誰かが俺に気づいて外の出てきてくれるのを待ち続けた。

しばらくは出口の真ん前にいたがやはりセキュリティに邪魔だといわれたので移動してタクシー乗り場で待つ。以前メキシコ出身のUBERドライバーに携帯を盗まれていたので正直メキシコ人の軽犯罪にはかなり警戒していた。周りを歩くメキシコ人たちもどう見ても善良な市民とは言えないような風貌の連中ばっかりだった。この中で万引きをしたことがないやつがいるとすれば道の隅っこでうずくまっていた右腕の欠損したホームレスくらいだろう。誰かに背を向けるのが怖かったので電話ボックスにもたれて友達を待ち続けた。

3時間ほど待っただろうか。時刻は午前4時。俺はちょくちょくhong kongのセキュリティの腕時計で時間を確認しており、何時まで待とうかと考え始めていた。もしかしたらもう俺を放ってアメリカに帰ったかもしれないし、あるいは広いナイトクラブの中を必死で探してくれているかもしれい。アメリカに帰られていたなら俺の帰国および帰国後の帰宅がめちゃくちゃ厳しくなるのでとりあえず待ち続けていたが、本当に帰っているならさっさとこんな危険な街から逃げ出したかった。人通りは全然なくならなかったが4時半あたりでセキュリティが入口を閉めてしまった。え?どういうことよ。。。

パニックに陥りかけた俺はタバコを吸いに来ていたボーイに煙草を一本やってどういうことなのかを聞いた。どうやらhong kongにはもう一つ出入り口があるようだ。そっちでみんなが待っているかもしれない!俺は反対側の入り口まで走った。人の声とバーから漏れる音楽と疲れで警察が俺を呼び止める声には気が付かなかった。

「stop!!」

周りの人たちも振り返るような大声で警察が叫ぶ。手には拳銃。見ているのは俺のほうだ。え?なんかした??

警察は銃を下ろさずになぜ走っているのかと聞いてきた。胸にはmexicoの文字。確かスペイン語で「無能」という意味だ。俺をひったくりとでも思っているのか?何も持っていないのに。俺はビビりながら手をあげてありのままを話した。警察ならこの状況を改善してくれるかも!

無能は銃を下ろすと行けといった。それだけ。バイバイ、無能。

走って行った入り口にも友達はいなかった。別の入り口なら出禁になった俺を入れてくれるんじゃないかという甘い考えもどうやら通じなかった。うーん、困った。

空はもう白くなり始めていた。めちゃくちゃ疲れていたし、俺のことなんて放ってみんな帰っただろう。俺もこんなに待っても出てきてくれないことに正直イライラしていたので一人でアメリカに帰ることにした。幸い国境までのタクシー代くらいはある。アメリカに帰ればヒッチハイクでもなんでもすればいい。憎いセキュリティに1ドルやって安全なタクシーを呼んでもらった。

無事に国境を越え、自由の国アメリカへ。帰ってきた!あとはどうやって家に帰るかだ。携帯があればUBERを呼べたが今はポケットに5ドルほど入っているだけだ。どう考えてもタクシーでは帰れないので仕方なく電車に無賃乗車させてもらった。そのままダウンタウンへ。ダウンタウンからも無賃乗車。ごめんなさい。。。

バスのターミナルについて、そこからはきちんとお金を払って家の最寄りのバス停へ。時間はお昼の10時過ぎ、、、最低な夜に疲れ果てていたのでそのまま眠った。

 

しばらくはメキシコに行きたくないですね。友達はやっぱり帰ってました。俺が一人で女を買いに行ったと思ったみたいです。

 

では。