タカヒロの日記

読んだ本や好きなものについて解説と感想を書いていきます。

【考察】『The Dark Side of the Moon(狂気)』(Pink Floyd)の解説・和訳(後半・B面)

前回の記事では『The Dark Side of the Moon(狂気)』の(A面)の解説を行いました。A面は人の誕生から死まで、人間の一生を表現していたため、わかりやすかったのですが、B面はもう少し難しくなります。

前半はこちら↓

takaloves.hatenablog.com

そんなB面の解説、頑張っていきます。

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6曲目「Money」の解説・考察

B面は小気味のいいレジの音から始まる。「Money」はその名の通り、「金」がテーマの曲だ。シングルカットされた曲なだけあって、聴きやすく、意味も分かりやすい内容となっている。早速歌詞の解説といこう。

歌いだしの「Money, get away. Get a good job with good pay and you're okay」からいきなり金!給料!以上!という感じで拝金主義全開なのが面白い。その後も俺の金に手をつけるなとかそう言った言葉がどんどん出てくる。

「Money, It’s a crime. Share it fairly but don't take a slice of my pie.」という歌詞は特に自己中心的な思考が全開で私は好きだ。我々は資本主義の世の中にあっても不平等が許せないのか、世の中には金持ち批判や成功者への嫉妬があふれているが、自分のこととなるとその不平等感だって正当化してしまうのだ。

7曲目「Us and Them」の解説・考察

 ふわふわとした美しい曲調のこの曲だが、歌詞に注目すると戦争についての曲であることがわかる。タイトルのUs and Themは戦争の自国側と他国側のことだ。

「It's not what we would choose to do」 や「 And in the end it's only round 'n round」 という歌詞からは戦争の無意味さが読み取れる。

この曲が戦争の曲であるのは間違いないが、より深読みすれば人間の残酷さというより本質的な部分が見えてくる。

「And after all we're only ordinary men」という歌詞は戦争に参加している兵士は敵も味方もただの一般人であるにもかかわらず、集団になればいともたやすく相手を殺すことができるという人間の本性を表していると読み取れるし、「It's not what we would choose to do」という歌詞からは自分で選択したわけではないが、命令されたから人を殺すという思考停止が読み取れる。思考停止で人を殺す一般人はこのブログでも過去に紹介したアイヒマンを彷彿とさせる。

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本ブログ2回目の登場アイヒマン

8曲目「Any Colour You Like」の解説・考察

 私は音楽的センスがないのでインストゥルメンタルの解釈がめちゃくちゃ苦手なのだが、これは「ドラッグ」の曲なのではないかと思う。(何でもかんでもドラッグソング呼ばわりする風潮に乗っかっていくスタイル)

 

「Any colour You Like」という歌詞の意味するところはマジでわからないが、個人的には「自由」かなあと考えている。ドラッグを使う自由というよりかは、トリップしているときにだけ味わえる「解放感」という意味での自由。

うーん、あんましっくりこない。

9曲目「Brain Damage」の解説・考察

この曲はこのアルバムを理解する上で最重要だと思うので丁寧に解説する。

The lunatic is on the grass
The lunatic is on the grass
Remembering games and daisy chains and laughs
Got to keep the loonies on the path

最初の一節では芝生の上にいる「lunatic(狂人)」と歩道にいる「loonies(狂人たち)」が対比されている。「lunatic」は道から外れた芝生の上にいるが、遊びのことや花のことを考えながら一人で幸せで、彼から見れば、道にいる「loonies」こそが頭のおかしい連中なのだ。

続く節はもう少し難しい。

The lunatic is in the hall
The lunatics are in my hall
The paper holds their folded faces to the floor
And every day the paper boy brings more

ここでは「lunatics」と複数形の狂人が登場しており、自分の中の狂人はたくさんいることが明らかになる。「床にたたまれたまま置かれた新聞」というのは世間への無関心・隔絶を暗示し、読みもしない新聞が毎日運ばれてくることからは抑圧された狂気が日々積もっていくことが暗示されている。

サビの歌詞ではついに「the dark side of the moon」という歌詞が出てくる。

And if the dam breaks open many years too soon
And if there is no room upon the hill
And if your head explodes with dark forebodings too
I'll see you on the dark side of the moon

直訳してしまえば「ダムがあまりに早く決壊して、(避難先の)丘の上にスペースがなくて、暗い予感が頭の中で爆発したなら、僕は月の裏側で君に会おう」となるのだが、ダムの決壊が精神の崩壊を、丘の上のスペースが心のよりどころを表しているのはほぼ明らかだろう。3,4行目のyouという二人称は今まで「lunatic」と呼ばれていた存在で間違いがないだろう。

精神が崩壊して、心のよりどころもなく、将来に絶望したときに、人は陽の当たらないところで狂人の仲間となる。

二番の解釈は海外サイトとかでもめちゃくちゃ分かれていたので私の個人的な解釈を述べたい。

The lunatic is in my head
The lunatic is in my head
You raise the blade, you make the change
You re-arrange me 'til I'm sane
You lock the door
And throw away the key
There's someone in my head but it's not me

最初の2行の直訳は「狂人が僕の頭の中にいる」であり、芝生(外)、ホール(室内)から頭の中にまで、「狂人」がより自分の近くに来ていることがわかる。3,4行目はロボトミー手術を暗示しているのだろう。だが、僕が「正気」に戻るまで脳を再構築しようとしている主体(you)は誰だろうか。

youが医者だという解釈もあるが、私は「頭の中の狂人」が主体(you)で、彼にとっての「正気」にしようとしていると考える。そして、僕を「正気」にした狂人は扉に鍵をかけてその鍵を捨ててしまうことで、社会との繋がりを断ってしまう。最後の行はこの頭の中の狂人は自分ではないのでコントロールできないことを表していると思う。

And if the cloud bursts, thunder in your ear
You shout and no one seems to hear
And if the band you're in starts playing different tunes
I'll see you on the dark side of the moon

最後の節のyouは明らかに今までのIだろう。リスナーの視点は僕から狂人に移っているのだ。耳の中で雷が鳴り響くようなストレスが彼を襲い、彼は助けを求めるがその声は誰にも届かない。

3行目の「お前のバンドが違う曲を演奏し始めたなら」が意味するところはよく分からにかもしれないが、ここには明らかにピンクフロイドを脱退したシド・バレットに対する罪悪感が現れている。

この曲はストレスや孤独がbrain damageを与え、人を狂人に変えてしまうプロセスを表現した曲といえるだろう。

10曲目「Eclipse」の解説・考察

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eclipse」は「日食」を意味する

この曲の解釈で注目すべきは

And everything under the sun is in tune
But the sun is eclipsed by the moon

の部分だろう。

自分が触れたり見たりするすべてのものやすべての人は、太陽の下で調和する。だが、調和をもたらす太陽は月(狂気)によって隠されてしまう。

この曲は一曲目の「speak to me」と同じ心臓の音を思わせるバスドラムのフェードアウトで終わる。このアルバム自体が人間の一生と狂気を表現したものであるのがここからも読み取れる。

おわりに

A面は人の一生をコンセプトにしていることが簡単に読み取れるのに対して、B面は「money」や「Us and Them」といった社会批判、インストゥルメンタルの「Any Colour You Like」、人間の狂気を描いた「Brain Damage」と「Eclipse」が詰め込まれていて難しいですね。

 

一曲一曲もっと詳しく解説できたらいいのですが、能力的に無理です、、、

 

大学で中国の民間企業のゼミを新規開設することに成功したのでそれ関係の本とかを今度は上げます。